「でもしかワーカー」がはびこる現在の介護保険制度

東京都の特養で性的虐待の事実があったと報道された。介護保険制度の主旨に反する行為であり、福祉施設で働く職員の風上にも置けないまこともって許しがたいことだ。
介護保険制度のめざすものは自立支援であり、尊厳の保持である。しかし、現在運用されている介護保険制度はアンビバレントな制度になっている。めざしていることと介護報酬体系のベクトルが違いすぎるから今回の虐待事例を起こすようなワーカーの存在を招いてしまうのだ。
個人の尊厳の保持を常に意識し、自らの仕事に使命感をもって働くためには、自らの仕事への確固たる価値意識と人間をどう捉えるかという高い認識がないといけない。この職業倫理が介護の専門性の基礎となる。ところが現行の介護保険は「仏を作って魂を入れず」になっている。現行介護保険制度は、「尊厳の保持」というお題目を唱えているだけで、個人の尊厳を尊ぶことができるワーカーを職場に入れてくるような体系にはなっていない。景気の上昇によって介護施設に職を求める人たちは極端に少なくなっており、また、意識が高く有能な職員が集まってこない介護報酬体系である。低い賃金でも質の高い労働をしている福祉施設の職員には頭が下がる。しかし、一方で低い賃金設定をしている介護保険制度は、今回の性的虐待を生むような土壌を醸成している。そこにはびこるのは『介護でもするか』、『介護しかできない』ワーカーである。このような状況を絶対に許してはいけない。『でもしかワーカー』をこの高齢者介護施設から退場させるような制度・仕組みを早く構築しないと日本の高齢者は大変なことになってしまう。